在中日本人に安心の内装を提供する     
             〜京都幸弘装飾工程有限公司 大谷進理事長に聞く

                                             

蘇州 京都幸弘装飾工程有限公司概観














 店舗外観



京都幸弘装飾工程有限公司設計施工オフィス










 設計施工された日系企業オフィス


























































































団塊の世代がまもなく退職年齢を迎え、少し早めのリタイアメント、セカンドライフの人生設計に関する話題はもっぱら注目を浴び、海外で第二の人生を積極的に考える人々は確実に増えている。京都幸弘装飾工程有限公司の大谷進理事長は、日本で横浜そごうの施工にも携わるなど一級建築士として活躍され、のちセカンドライフの地を奥様の出身地である蘇州に求められた、海外移住先駈け組だ。7年間にわたる蘇州での仕事、暮らし。今に至る思いをお聞きした。

 模索の過程

―蘇州にいらしたのはいつですか。
大谷進理事長 98年です。今年で7年です。最初の1年間は実は遊んでいました。1年間中国をずっと見て歩いて、蘇州は自転車でグルグル廻りましたね。その時すでにこの店舗は買ってありましたが、何をやるかまだ決めていませんでした。

―日本では建築士としてご活躍。
大谷進理事長 でも、最初はこちらで仕事をする気はありませんでした。私は家内が中国人だからこちらに来ましたが、こちらで商売して儲けようという気もなかったんです。マンションをいくつか買って家賃で食べることができればいいなあと思っていました。今私は57歳で、今年58歳になりますが、しかしこのまま何もしないで過ごせば年取るなと思いました。レストランがいい?喫茶店は?ブテイックは?なんて思いましたが、考えてみると1年間ぶらぶらしていた時、眼につくのはやはり建築ばかり。私は建築しかできないんだから建築やろうって気付きました。けれど建設会社って資本金が何億も必要なんですよ。半端じゃない。中国の企業の仕事なんて取れるわけはないし、内装ならまだ個人ですからなんとか取れるだろうと思い始めたんです。でもお客さんが来ないとご飯を食べることができないってこともないし、家賃で追いかけられる心配もないですしね。のんびりやっています。月に5,6件かな。それぐらいあれば十分。ご存じのように人件費は安いですから。だから私はビジネス目的で中国にお越しの方々とはちょっと違います。

―主なお客様は日本企業?
大谷進理事長 蘇州では日本人個人によるマンション購入が増えていて、弊社では工場の内装より個人向けの需要の方が多いです。工場の場合はあらかじめ指定業者が入っていることが少なくないこともあります。日本のお客様にとっては、日本語で相談でき、日本のこういうイメージがほしいといえばそのまま通じる。それからもうひとつは安心感でしょうね。見積もりと同じ材料を必ず使い、偽物は使わない。しかも価格は中国の内装店と同じですから、安心できればそのほうがいいということでしょう。

■内装業のむずかしさ

―蘇州での内装業の実際はいかがですか。奥様も強力なパートナーですね。
大谷進理事長 そうです。彼女が見積もり等を仕切ってくれていて、私は材料の手配や現場をどう作るかに関わっています。家内は弊社の大黒柱ですよ。私は下から揺るがしているんですけど。いつ転んでもいいと思っているから(笑)。
 この仕事の難しさは、人によって好みが違うことですね。お客様の立場からの使い勝手、使いやすさをなによりも重視しています。私はほとんど日本製のものを使いますが、日本製のものについては自信を持ってお勧めできますし、何がいいか一歩踏み込んだ説明もできますから、安心してお使いいただくことができます。また価格も大分安くなってきましたしね。建築に関しては自信がありますが、内装というのは、100点満点が採れない仕事なんですよ。どうしてもお客様の好みに基づいた細かな評価を受けますから。自分のものは60点と評価しています。けれど他の店には決して負けない。細やかな対応については自信を持っています。中国人の家の内装を手がけることもありますが、日本人に図面を書かせたというのは一種のステイタスになるんですね。また日本人の熱心な働きぶりを評価してくれています。当地では日本人といえば勤勉で誠実と見られることが多いので、かなり得をしています。 
 中国でこの仕事が一番むずかしい点といえば、入札です。日本の入札は基本になる図面があるから、判断基準がある。でも中国は図面のないところで入札する。何を使うかもわからないでしょう。こんなのは競争入札と言えない。中国では人件費が安いが、資材が高い。だからこれが一番困りますね。

―中国で内装業は大変なブームですが…
大谷進理事長 お金がかかりませんからね。コンピューターと畳み一枚分の場所があればできるじゃないですか。あとは外から人をスカウトしてお前いくらでやるっていうことになる。これぐらい元手がかからなくて儲けのある商売はない(笑)。あとは怒られてもお金はもらっているんだからもう知らないなんてことが、結構あるんじゃないですか。私どもが日系企業さんを施工する場合にも、ちょっとしたリスクがあります。つまり場所はすでに借りてあるので内装を始めないといけませんが、支払いといえば、会社の登記申請後許可を取得し、銀行口座を開設してからになります。そうすると弊社のほぼ全額代払いになります。内装は1ヵ月半ぐらいで仕上がりますから、開設手続きが済むのとほぼ同じぐらいになります。だから弊社は日系しかしません。

―未払いのまま逃げられることも可能性としてありますよね。
大谷進理事長 ええ、でも1度も裏切られたことはないです。日本から中国に来て最初に立ち上げようという際に、ハナから騙すつもりで作る人はまず日本人にはいませんね。

■蘇州での新たな心境

―蘇州で7年間過ごされて心境の変化などは?
大谷進理事長 蘇州に来てから世間も人間関係も変わってきましたね。こちらに来てからは、人間が枯れるというのはどういうことかよく考えます。人っていうのはいくつになってもなかなかいい感じでは枯れることができないものでしょう。同じ年代でもリタイヤ組みかあるいは第一線で働いているのかで、ずいぶん違いますよね。中国の何にどうかかわるかで、見えてくるものがかなり違ってくるんじゃないかな。
 今、蘇州で仕事をしていて、お客様にああ信頼してもらっているなってことをしみじみ感じるんです。クチコミで広まってお客様がいらっしゃるケースが大半ですが、楽ですね。いまはやりたい仕事しかやりません。今はお客様イコール友達なんです。蘇州にいる駐在の人たちは皆、人に飢えていて寂しいですから。いろんな企業のトップの方と会食の機会も多いのですが、お前には何でも話せるとおっしゃる。利害関係もないし、陥れようということもない、気のおけない友人として話せるとおっしゃっていただきますよ。こちらに来るとお客さんから元気をいただきます。ここでは仕事を通じての仲間作り。これが私のガソリンです。目的がお金儲けにないという点にもありますが、日本じゃやっぱりお金儲けが主体になっていました。こちらだとボランテイアでも結構しますしね。経済的な面にあまり固執しなくなりましたね。不安がないからかもしれない。

―それはどうしてでしょう。
大谷進理事長 もう死ぬまで生きていく間の蓄えは作ってありますから。さらに会社を大きくして、子どもに継がせて、孫に云々等という野心は全くないんです。そういう経済効果を期待していませんから日本にいた時とは自ずと違ってきますよね。仕事も原価がどうなのかより、こうやったほうがきっと喜んでもらえるだろうなという発想になっています。
 日本ではどうやって生きてやろうかと思って生きてきた。でも中国ではどうやって枯れてやろうかと思っています。要するに何かを始めたらどこかで終わらなければいけないですよね。人生そのものも、命も含めて。若い時って言うのはどうやって咲かそうかと思って考えていた。年取ってくると、まだちょっと早いと思うけど、どうやって枯れようかなって思う。そういうふうに考えることができるようになると、すごく気持ちにゆとりが出ます。受身になるって言うんですか。攻めじゃなく、守ると言うのでもなくて、受身で生きていられる。流れを変えてやろうではなくて、自然に流れに任すっていうのかな。
 この間日本に帰って、昔の仲間たちと酒を酌み交わしました。日本経済は悪いですから皆一生懸命やっていて、少しずつよくなっている。こちらにも時々遊びに来てくれますが、7年離れてもまだ友達なんだなと思ったら、友達っていうのはいいなあと離れてあらためて実感します。そういう仲間と話していても、先のことは考えたくないけれど、そうだね、どうやって枯れようかねっていう話題になる。どこか広い野っ原買って、毎日自分で食べるものは自分で作るのっていいねって話しながら。昔はそんな話題はなかったですね。そんな話題を出せるようになったのは、少しは大陸的になったのかなって思いますよね。だからいま楽に生きています。

京都幸弘装飾工程有限公司DATA

創立       1998
登録資本金    200万元(約2,800万円)
業務内容     内装設計施工
2004年売上実績  750万元(約1500万円)
従業員数     13人(内、日本人1名)

 
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